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中野翔太・上村文乃デュオリサイタル



注目のチェリスト上村文乃、 多彩な才能の中野翔太


この二人のデュオによる二十世紀の巨匠の作品を中心に──

チェロの音は実に身体にやさしく響いてくれる。

低音のふくよかな弦の響きがまるで人の声のようにあたたかく語り、心地よく全身に沁み渡る。

今回も特筆に値すべきすばらしい演奏会が実現することになったのではないだろうか。

美竹サロンではこれまで演奏される機会が少なかった“チェロのソロ”を堪能できることになった。

先月、ホテルオークラ音楽賞を受賞したばかりの話題の注目の美しきチェリスト上村文乃氏の初登場も実現することになった。

上村氏といえば、ソロのみならずトリパルティ・トリオ(Vn.米元響子、Pf.菊池洋子)として、また、世界最高峰のバッハ演奏集団であるBCJ(バッハ・コレギウム・ジャパン)のメンバーとしても活躍中のピリオド、モダンともに弾きこなす逸材チェリストである。

長身で華やかな彼女が紡ぎ出すチェロの音色は柔らかく、かつ凜としており、その深い表現に魅了されてしまうだろう。

そんな彼女と今回共演するピアニストは中野翔太氏である。

幅広く多彩な才能の中野翔太氏の経歴も、実に華やかなものだ。

名門ジュリアード音楽院、同大学院を卒業し、NHK交響楽団、読売日本交響楽団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(小澤征爾指揮)等と多数の話題の共演を重ねて来ている。

クラシックの音楽家としては珍しく、ジャズや現代曲、作曲に至るまで、幅広い取り組みで活躍されているのも彼の特長ではないだろうか。


今回のチェロとピアノを心ゆくまで堪能できるようなプログラムには、様々なアイデアが隠されていて、とても興味深い。

ソロあり、デュオあり、ソナタあり…と、バラエティに富んだ盛りだくさんなプログラムに一見、感じるが、実はすべて激動の時代を生き抜いた“二十世紀の巨匠たち”が生み出した作品ばかりなのだ。


  ショスタコーヴィチ(1906年~1975年)ロシア:映画音楽「馬あぶ」Op.97より ロマンス

  レスピーギ(1879年~1936年)イタリア:アダージョと変奏

  ガーシュウィン(1898年~1937年)アメリカ:ラプソディー・イン・ブルー(ピアノソロ)

  黛敏郎(1929年~1997年)日本:Bunraku(チェロソロ)

  カステルヌーヴォ=テデスコ(1895年~1968年)イタリア:フィガロ(ロッシーニの歌劇「セビリアの理髪師」より)

  ショスタコーヴィチ(1906年~1975年)ロシア:チェロ・ソナタ ニ短調 Op.40


すべて聴きたくなる作品ばかりであるが、なんと言っても注目すべきは、最初と最後に配置されたショスタコーヴィチではないだろうか。

ショスタコーヴィチの音楽は、どこか光と闇を見るような強烈な個性と異彩を放ち、シニカルな印象に恐怖すら感じることすらあるのだが、今回は少し趣が異なっている。

一曲目の映画音楽「馬あぶ」Op.97より ロマンスでは、ショスタコーヴィチの音楽にこれほど優しく繊細なメロディが存在するのか、と思ってしまうほど美しさが際立つ。

そして、大トリであるチェロ・ソナタ ニ短調 Op.40はシニカルな要素を持ちつつも、洒脱で叙情的。

チェロのあたたかい音色と瑞々しい音楽性を感じ取れるような作品となっていて、きっとショスタコーヴィチの"意外な一面"を発見することとなるだろう。


その他のプログラムもチェロとピアノを堪能するにふさわしい内容なので、少し紹介したい。

レスピーギのアダージョと変奏は、元々はチェロと管弦楽のための作品を、今回はチェロとピアノで奏でられ、流麗で穏やかな旋律が耳に心地よく響いてくるはず。

そして、クラシック音楽に馴染みがない人も一度は聞いたことがあるだろう、ガーシュウィンのラプソディー・イン・ブルー。

たった2週間で書き上げられたというユニークな作曲の背景で知られるこの作品だが、クラシックとジャズを融合させた作品の先駆けとなり、今でも人の心を掴むような訴求力を持つ作品だろう。

黛敏郎の「Bunraku」は、日本の三大芸能のひとつである「文楽(人形浄瑠璃)」の世界を、西洋楽器であるチェロにリダクションしようという試みであるそうだ。

日本の禅の文化が生み出した、緊張感の高い音楽が、不思議な心地よさを感じさせる。

一説によると、黛敏郎氏は非常に厳しい一面もあったそうで(?)この作品の前衛的な取り組みからも、彼の意思が宿っていると感じられる。

そして、ロッシーニの歌劇「セビリアの理髪師」よりカステルヌオーヴォ・テデスコ編曲のフィガロ。

カステルヌーヴォ=テデスコは実はレスピーギと同年代の作曲家で、「名犬ラッシー」や「スーパーマン」など、映画やドラマにいたるまで、幅広いジャンルの楽曲を生み出している。

今回の作品は同じくイタリアの作曲家、ロッシーニの軽快で美しい旋律をチェロが豊かに奏でます。


言葉で表現するのはこの辺が限界だろうか。初登場の本格派の奏者二人が紡ぎ出す、二十世紀の巨匠たちが生み出した作品たちを、こんな時代だからこそ、何か感じるものがあるのではないだろうか、平和を願うばかりである。


(美竹清花さろん)



Mitake Sayaka Salon Vol.109

開催時刻 2022年 04月 22日 (金) 

開場 18:30 開始 19:00

お問合せ先

美竹清花さろん/株式会社ILA

03-6452-6711 / 070-2168-8484

info@mitakesayaka.com


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